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休めない現代人は重症化しやすい? [医学・医療]

「風邪は万病の元」と言われるが、これはいわゆる「風邪」と言われる症状が、時に重症化して「病」になりうることを示している。

かつては大した薬や治療法もなかった時代は、言い伝えられてきた民間療法を用いながらしっかり体を休め、体力を温存することで戦ってきた。
それで改善する事もあれば、重症化して死に至ることもある。
当時は「神のみぞ知る」領域であったであろう。

現代では、医学・医療が発展して、様々な病気が診断できるようになり、治療できるようになってきた。
そして何でも薬で治るかのように錯覚されるようになった。
しかし、一番大事な事を現代人は忘れている。
それは「休む」と言うこと。

いくら治療を試みても、体力がなければ病に打ち勝つことはできない。
現代人は仕事に追われ、風邪に冒されながらも薬を飲んで働こうとする。
しかし、多くの薬は根本的な治療を目的とする物ではなく、対症療法でしかない。
大事なのは、体を休めて体力を温存することだ。
水分を取り、良質の栄養を程よく取り、しっかり休むこと。
これが何より病気に打ち勝つ上で必要である。

薬を飲めば治ると信じ、体にむち打ち病に立ち向かう姿は、
僕からすると無謀に見える。

実際には、若さで乗り切れることがほとんどではあるが…。
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低体温 [医学・医療]

冬になると多い低体温症。
体温が脇では測れず、肛門に体温計を挟んだりして測定する。
 #もちろん、専用の体温計ですよ。
肛門で測る体温(深部体温)が34℃を下回ると循環や呼吸の機能が破綻し出す。
更に28℃を下回ると、昏睡状態になり、命に関わる不整脈を誘発する。

単に寒いところにいたからなるとは限らず、
アルコール多飲や代謝性疾患、敗血症などの病気でもなり得る。
原因の検策と治療が重要で、この状態で搬送されてきたら「死にかけてる!」と思って救急医としてはちょっと焦る。

治療をするとすれば、温かい温度の輸液を行い、電気毛布をかけるなどで対応するが、時にはお湯で胃洗浄や膀胱洗浄をしたり、胸やお腹に管を入れてお湯を灌流させたり、人工心肺装置を使って血液を温めて戻すなどの荒療治を行う。

時には脳保護機能を求めて低体温状態にすることもあるが、
血液の異常を来したり、感染症にかかりやすくなったりと体の状態が不安定になる低体温は、極力診たくないものだ。
タグ:低体温
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動かすと痛いなら、動かさない [医学・医療]

ぶつけたり、何かしらの事で痛みがある場合、
そこをじっとさせていたら痛くなくて、動かすと痛いなら、
そこは動かさないことです。

痛みを生じさせる動きがその場所の具合を更に悪くさせるから、
体は「痛み」というサインを出して脳に訴えます。
「その動きは止めてくれ!」と。

だから痛みがあるなら動かさないことです。
不安定な場所なら、固定をしましょう。
動かせなくすることで、痛みは軽減するはずです。

それ以外に、捻挫や打撲・骨折では「RICE」と言う処置を行います。
これはそれぞれの処置の頭文字を取ったもので
Rest(安静):固定を含めた痛めた場所周囲の安静
Icing(冷却):痛めた場所の冷却
Compression(圧迫):包帯固定などでの腫れている場所の圧迫
Elevation(挙上):痛めた場所周囲の挙上
を意味します。
これらの処置を行う事で、痛みの軽減を図ります。
その他には、抗炎症効果のある痛み止めも良いでしょう。

上記処置で軽減する程度の痛みなら、それで様子を見ていていいでしょう。
それでも良くなる気配がなければ、医療機関を受診して下さい。
骨折などあれば、手術などが必要になることもあります。
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心筋梗塞の診断の難しさ [医学・医療]

患者「胸が痛い」
医者「心筋梗塞です」
なんて簡単に診断されることはない訳ではない。心電図で特徴的な波形の変化があれば、サルでも診断できる。
難しいのは、微妙な変化や、まったく波形に異常を認めない場合だ。

心筋梗塞は、心臓に栄養を与える血管が詰まって起こる病気だ。
完全に詰まれば心筋梗塞だし、「ちょっと詰まりかけては流れて」を繰り返す場合は狭心症と言われる。症状は典型的には胸痛が続いているか、一時的な胸痛で済んでいるか、の違い。
ただ、心筋梗塞であっても、冷や汗だけだったり、嘔吐だけだったりと症状も様々だ。
それゆえ、最終的には問診が重要になる。

例えば、既往歴。
高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、心筋梗塞・狭心症の既往がある胸痛などは疑わしい。
生活習慣も気にかかる情報だ。
例えば喫煙やストレス、睡眠不足などは、心臓の血管に負担を強いる。
また、虚血性心疾患の家族歴。これなんかも、遺伝傾向もあると言われており、気にかかる。

これらの情報を元に、また、最近の生活において胸痛や圧迫感などの症状があったかどうかなどを聴いて、疑わしい場合は心臓カテーテル検査を勧める。
その結果、詰まりかけていればステント治療などの積極的な治療が行われ、今後の致命的な発症を予防しうる。

ただ、難しいのは「高齢」「女性」「糖尿病」のキーワードを持つ患者さん。
時に冷や汗だけだったり嘔吐だけだったりと症状が典型的でないため、しばしば医者の鑑別疾患の中から心筋梗塞などの虚血性心疾患が漏れてしまう。
心電図も典型的でなければ、心筋梗塞をそれなりに診ている医者でなければ想像さえしないだろう。
救急医以外の専門科医で救急当直を回している日本の現状では、今後も見過ごされる可能性がある疾患だ。
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隣人のCPA [医学・医療]

勤務がなくて、自己学習をしていた午後。自宅の目の前に救急車が止まった。
妻が「あら、家の前に救急車が…」と声をかけてきた。

窓から外を見ると、救急隊がテキパキと傷病者を迎えに行く準備をしていた。
と、いきなり救急隊員の動きが慌ただしくなった。
その動きは明らかに「現着時CPA」だった。
 ※現着時CPA
  救急要請の段階では心肺停止状態(CPA)とは分からない状態で
  現場に到着して初めてCPAであったと判明する症例。
  救急隊員にとっては、CPAと分かっていれば蘇生処置のための
  道具を予め用意して置くものだが、突然判明するとかなり焦る。
そして、僕もとっさに家を飛び出し、向かいの家に飛び込んでいた。

家の主に「おじゃまします」と声をかけ、救急隊員に声をかける。
隊長は「えっ?!何で先生がここに?!」とかなり驚いている。
「いや、目の前が自宅なもんで…」と答えて傷病者を見た。
明らかに心肺停止状態だ。すぐに心臓マッサージを開始した。

隊長はMCドクターに連絡を入れる。
 ※MCドクター
  救急隊員の医療活動を担保するための医師。
  MC指導医というMC協議会に登録されている医師が
  必要に応じて救急隊員に電話で指示を出すこともある。
隊長は「そちらの○○先生が現場にいるんです。特定行為の指示をお願いします」とMCドクターに伝え、MCドクターから「気管挿管」と「静脈路確保」の指示が出された。

現場に医者が居るからと言って、必ずしもその人に何でもさせて良いとは限らない。それが本当に医者かどうか分からない上、その医者が正しい処置をする保証もないからだ。
しかし、そこは勝手知ったる間柄であり、気管挿管も静脈路確保も僕がした。
そして救急車に乗せてから、薬剤を投与する。
2回投与したところで、自己心拍が再開した。
程なく病院に到着し、同僚のMCドクターに引き継いだ。

心肺停止になった原因は不明だが、蘇生後脳症として内科に入院となった。
後で知った話だが「本人と家族との話し合いでは延命治療はしない方針だった」とのこと。
蘇生させてしまったことが良かったのだろうか?と思い悩んだ。
はたして、そのお婆ちゃんは、翌日の昼に亡くなった。

僕は仕事で居なかったが、自宅にいた妻から連絡が入った。
「遠くにいた息子が駆けつけて、まだ息がある内に会うことができて良かった。感謝している」と言っていた、と。

その連絡を聞いて、胸が熱くなった。
今まで、高齢者の心肺停止に対して消極的だった。
まず助からないのが目に見えているからだ。
それでも、少しの時間だけでも家族と最期の時間を過ごして貰う事は、それだけでも意味があることだと言うことを改めて強く感じだ症例だった。
これからの高齢者の心肺停止に対して、対応がまた少し変化しそうだ。
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研修医 [医学・医療]

およそ9年前まで、医学部を卒業し国家試験に合格した新米医師は、ほとんどが大学の何かしらの診療科に入局し、そこで「研修医」として2年間を過ごす。
その間、他院の当直バイトなどを経験し、そこでの救急診療を経て、救急医療・医学を学んできていた。
時に、自分の専門外かつ未熟なことで対応できないことは多々あり、患者自身もそうだが研修医自身が冷や汗をかくことがしばしばあった。
そういう風に最初から専門科に入局した医師は、その診療科以外の勉強をまずすることはなく、自分の専門以外の疾患に対応できなくなってしまう。
結果、医師免許は持っていても心肺蘇生できない医師や、小児の診療は一切できない医師、傷の縫合さえできない医師はたくさんいた。

そういう事態に危機感を抱いてか、国民医療費削減を目的とするなんて裏話もあるが、およそ8年ほど前から「初期研修の義務化」と言うのが始まった。
免許を取得したばかりの医師は、2年間を研修指定病院で研修し、修了しなければ、その後の保険医療や開業などに制約を来すというものだ。
初期研修を義務化し、多くの診療科を回ることで、様々な疾患に触れる機会を持とう、という意図があった。
しかし、実際にはその趣旨はしっかりと履行されていない。

今までの制度では、入局してきた新米医師は、今後の自分たちの後輩として成長し、その専門科で食っていけるだけの技量を身に付けてもらわなければならないという観点から、その医局に属する先輩医師たちから熱い指導を受けていた。その中で、研修医たちも様々な課題を課され、任されたり責任を負わされたりすることで成長していた。
しかし、今の研修義務化後の研修医に対しては「将来どの科に進むか分からない」と言うのもあり、また制度の中で「9時~5時で終了」「給料の保証」などが強調されてしまい、お客様扱いになっている感もある。
実際、学生時代の臨床実習と変わらないような研修しかしていない所もあったりで、研修の質としては緩くなったと言わざるを得ない。
その結果、初期研修を終えた医師は、かつてに比べれば頼りない部分が多い。

当院では8年前に研修が義務化される前から、多診療科を回るスーパーローテートと言われる研修をしており、また夜間には自分が所属する診療科とは関係なしに救急外来の当直をすることが義務付けられており、その為に多くの症例に触れる機会があった。その中には、初期研修医しかいない救急当直も多々あり、おそらくはかなりいい加減な診療しかしていなかった可能性も否定はできないが、各診療科の当直やオンコールのバックアップがあり、何とか乗り切っていた。そんな研修を通して先輩医師たちは強く逞しく医師として成長している。

最近では、そういういい加減な診療をさせるのは望ましくないとの観点から、中堅以上のスタッフが付くようになっている。
その為に、かつては救急当直の責任を担っていた2年目研修医でさえ、かなり中堅以上のスタッフに依存する傾向があり、頼りない印象を受ける。
それでも当院では研修医たちをお客様扱いはせず、彼らに責任を負わせる形で仕事をさせるために、彼らには医師としての責任感が芽生えてきているのは見て取れる。

なかなかどこまでさせるべきかは難しい所だが、責任を負わせて放置させる訳ではなく「任せる」ことで、彼らは成長できると考える。
彼らが今後もしっかりした医師に育つよう、また同じように後輩を指導する立場に立った時にその任を果たせるように、
彼らがどこの診療科の医師になるかは知らないが、僕らがしっかり指導しなければならないと思っている。

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