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ライフ・ワーク・バランス [社会問題]

今日までの3日間に品川で日本救急医学会が開催されています。
初日は丸一日仕事で、2日目に当直明けで参加してきました。

その中で、救急医のライフ・ワーク・バランスについて話し合われるパネルディスカッションがありました。
演者は救急医一イクメンの林先生や、災害対応などでバリバリ活躍される阿南先生というある意味で対称的な2人と、その他の学会で男女共同参画を目指す委員会のメンバーとして活動されている女性医師の皆様方でした。

その中で語られたこととしては、
・女性医師の割合はますます増えている
・医療界はまだまだ男社会
・女性医師の活躍のために、パートナーとして多い男性医師の時短などの環境整備が必要
・時短で働かない分を負担する他のスタッフへのインセンティブが必要
・何より、上司の理解(=「イクボス」の存在)が不可欠
・その為に、指導医には男女共同参画に向けた教育が必要
と言った内容と感じました。

自分自身は3男が生まれたときに1ヶ月の育休を取りました。
育休の制度も様々な問題があり、気軽に取れるものじゃない感じがしていました。
そこで育児の大変さを改めて知りました。
今のお母さんたちがどのような苦労をしているのか、ほんの1ヶ月だけの育休でしたが、垣間見ることができたように思います。

ところで、育休を取られたり時短で働かれたりすると、当然同僚としてはその分の負担が生じます。
それに対して、カバーするスタッフから不満が出るという話でした。
そういう不満を言う人たちに対して、個人的には異議を唱えたいと思います。

子育ては、自分たちの未来を託す行為ではありますが、しっかりした子育てがされればそれは社会全体の利益になるはずです。
何より、今育てている子どもたちが大人になった時、私たちの生活を支える年金を負担する存在となります。
子育ても色んな問題があって楽な訳ではありません。親として大変な想いをしながら、将来の日本を支える存在になって貰うべく育てています。
方や、DINKSで暮らされている皆さんは、将来は私たちが育てた子どもたちから年金を受ける立場に立ちます。自分たちが苦労して子育てをする訳でもなく、苦労して子育てをした者の子どもたちからの恩恵を受ける訳です。
そうやって考えれば、今子育てをしない人たちが負わされることになってしまう負担は、将来の恩恵を受けるための投資と考えられないでしょうか?

今の出生率は1.4程度に落ちており、高齢化はますます進み、その分だけ若者の負担は増します。
日本という社会を衰退させないようにするため、今の育児盛りのライフ・ワーク・バランスを整備することは、重要な課題だと感じています。
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低体温療法のススメ [医療現場]

低体温療法(脳低温療法)という治療がある。
一般的には、心肺停止の患者が蘇生したあと、その脳の機能を温存させ、時間が経って回復してきた時に少しでも脳の機能を残しておこうとする医療行為だ。

ここで断っておかなければならないのは、心肺停止から蘇生して低体温療法をすれば、誰もが後遺症なしに復活することを約束するものではない、ということ。
そもそも心肺停止に陥る段階で体は既に瀕死の状態であり、その治療が完遂されなければならないこと、また、脳のダメージが少ない内に低体温療法を行わなければそれまでに脳はダメージを受けてしまうなど、完全復活までには様々な関門をクリアしなければならない。
適応とするにはどういう患者が良いのか、年齢やADLは?など、適応の幅を決めるのもまた重要である。

当院でも、そろそろ低温療法を始めようかというところで、その適応について悩むことになる。
様々な診療科が関わりうるだけに、救急だけで決めきれない部分もあり、悩ましいところだ。

違法薬物について [医療現場]

またまたやってきましたこの季節。

夏と言えば湘南!
そう、湘南の海は、夏になると県内外から人が集まり、特にここぞとばかり羽目を外す若者が一気に増える季節でもあります。

毎年、この季節になると日頃遭遇することの少ない患者さんたちに会います。
水着だけで砂まみれの酔っ払い。
時に暴行事件が絡んでいたり、違法薬物が絡んでいたり、様々な病歴の患者さんたちです。
たいてい、警察のお世話になる事が多いです。

ちなみに、違法薬物が絡んでいたら通報ですから…。

---------*
刑事訴訟法239条
第二百三十九条  何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
○2  官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
---------*
判例 平成17年07月19日 第一小法廷決定 平成17年(あ)第202号 覚せい剤取締法違反被告事件

要旨:
 救急患者から承諾を得ずに尿を採取して薬物検査をした医師の通報を受けて警察官が押収した上記患者の尿につき,その入手過程に違法はないとされた事例

内容:  件名 覚せい剤取締法違反被告事件 (最高裁判所 平成17年(あ)第202号 平成17年07月19日 第一小法廷決定 棄却)

 原審 東京高等裁判所 (平成16年(う)第2179号)
---------*

基本的に違法行為を発見した場合は誰もが通報していいので…。
医師の守秘義務ってのは、違法行為に対しては無効です。
最高裁の判例でも出ています。

ということで、湘南の海で楽しまれるときは、節度を持って楽しんでくださいね。


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休めない現代人は重症化しやすい? [医学・医療]

「風邪は万病の元」と言われるが、これはいわゆる「風邪」と言われる症状が、時に重症化して「病」になりうることを示している。

かつては大した薬や治療法もなかった時代は、言い伝えられてきた民間療法を用いながらしっかり体を休め、体力を温存することで戦ってきた。
それで改善する事もあれば、重症化して死に至ることもある。
当時は「神のみぞ知る」領域であったであろう。

現代では、医学・医療が発展して、様々な病気が診断できるようになり、治療できるようになってきた。
そして何でも薬で治るかのように錯覚されるようになった。
しかし、一番大事な事を現代人は忘れている。
それは「休む」と言うこと。

いくら治療を試みても、体力がなければ病に打ち勝つことはできない。
現代人は仕事に追われ、風邪に冒されながらも薬を飲んで働こうとする。
しかし、多くの薬は根本的な治療を目的とする物ではなく、対症療法でしかない。
大事なのは、体を休めて体力を温存することだ。
水分を取り、良質の栄養を程よく取り、しっかり休むこと。
これが何より病気に打ち勝つ上で必要である。

薬を飲めば治ると信じ、体にむち打ち病に立ち向かう姿は、
僕からすると無謀に見える。

実際には、若さで乗り切れることがほとんどではあるが…。
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低体温 [医学・医療]

冬になると多い低体温症。
体温が脇では測れず、肛門に体温計を挟んだりして測定する。
 #もちろん、専用の体温計ですよ。
肛門で測る体温(深部体温)が34℃を下回ると循環や呼吸の機能が破綻し出す。
更に28℃を下回ると、昏睡状態になり、命に関わる不整脈を誘発する。

単に寒いところにいたからなるとは限らず、
アルコール多飲や代謝性疾患、敗血症などの病気でもなり得る。
原因の検策と治療が重要で、この状態で搬送されてきたら「死にかけてる!」と思って救急医としてはちょっと焦る。

治療をするとすれば、温かい温度の輸液を行い、電気毛布をかけるなどで対応するが、時にはお湯で胃洗浄や膀胱洗浄をしたり、胸やお腹に管を入れてお湯を灌流させたり、人工心肺装置を使って血液を温めて戻すなどの荒療治を行う。

時には脳保護機能を求めて低体温状態にすることもあるが、
血液の異常を来したり、感染症にかかりやすくなったりと体の状態が不安定になる低体温は、極力診たくないものだ。
タグ:低体温
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来院される患者のトリアージ [医療現場]

断らない病院に勤めていると、救急外来に多数の患者が押し寄せてくる。
特に今の季節は熱が出たらインフルエンザを心配し、嘔吐・下痢ではノロウイルスを心配に来院される患者が多い。基本的には救急受診をする必要は無く、自宅療養が公衆衛生的にも感染拡大の予防に良いのだが、様々な問題(メディアによる扇動、個人の不安、施設としてのリスクマネジメントなど)から受診されることが多い。

そうなると、救急外来にありながら、本当に緊急性がある患者と基本的に緊急性がない患者が入り交じることになり、外来の待合は受診希望の患者でごった返す。
それが待ち時間の延長に繋がり、診療開始・治療開始の遅延に繋がる。
医師一人一人が抱える患者が多くなればなるほど、患者にかける手間は減らさざるを得ず、結果的に誤診や見逃し、診断遅延に繋がるリスクを高める。

その限られた医療資源を有効に活用するためにも、トリアージと言うものが有効に働くことがある。
受付をされた患者を看護師がトリアージ(篩い分け)を行い、緊急度を判別していく。
医師は緊急度に応じて診察順位を変更し、医療資源の再分配を行う。
そうすることで、特に必要な患者には集中的に、そうでない患者には時間に余裕を待たせながら診療を行うことができる。

ただ、結局はトリアージをしても来院する患者が多ければそれらに対応せざるを得ず、医療資源とのバランスに不均衡が生じれば、先に挙げた医療現場での遅延が起きる。
それらを解消するには、一病院だけで解決を図るのではなく、地域の他医療機関との連携が鍵となるだろう。

今後は一医療機関でまとまらず、地域の医療機関との連携を図り、場合によっては受診された患者のトリアージ結果で他院へ紹介するなどの対応も検討されるべきかも知れない。
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あけましておめでとうございます [あいさつ]

今年も無事に年を越すことができました。

年越しは家族と過ごさせていただき、
2〜3日の救急外来を務めさせていただいております。
優秀な後輩たちに支えられ、何とか大きな問題もなく、順調に診療を行えていると実感しています。

今年も皆さんに頼りにされる救急医療を提供できるように精進して参ります。
今年もよろしくお願いいたします。
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動かすと痛いなら、動かさない [医学・医療]

ぶつけたり、何かしらの事で痛みがある場合、
そこをじっとさせていたら痛くなくて、動かすと痛いなら、
そこは動かさないことです。

痛みを生じさせる動きがその場所の具合を更に悪くさせるから、
体は「痛み」というサインを出して脳に訴えます。
「その動きは止めてくれ!」と。

だから痛みがあるなら動かさないことです。
不安定な場所なら、固定をしましょう。
動かせなくすることで、痛みは軽減するはずです。

それ以外に、捻挫や打撲・骨折では「RICE」と言う処置を行います。
これはそれぞれの処置の頭文字を取ったもので
Rest(安静):固定を含めた痛めた場所周囲の安静
Icing(冷却):痛めた場所の冷却
Compression(圧迫):包帯固定などでの腫れている場所の圧迫
Elevation(挙上):痛めた場所周囲の挙上
を意味します。
これらの処置を行う事で、痛みの軽減を図ります。
その他には、抗炎症効果のある痛み止めも良いでしょう。

上記処置で軽減する程度の痛みなら、それで様子を見ていていいでしょう。
それでも良くなる気配がなければ、医療機関を受診して下さい。
骨折などあれば、手術などが必要になることもあります。
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100歳超の手術 [医療現場]

先日、100歳を超えている人が頭の手術を受けた。

受診の1ヶ月前に転倒し、数日前にも転倒し、その後から右の手足が麻痺している、
として家族に連れられやってきた。

診察では明らかな右の手足に力が入らない。
しかし、頭はしっかりしていて、話していることも理解できる。
元々は自分で歩いている元気な高齢者だ。

頭のCTを撮ると、脳を圧迫する出血が頭蓋骨の中に見られた。
しかし、それは緩徐に進行する「慢性硬膜下血腫」と言うもの。
「元々元気だった高齢者なので、手術をしたら力も戻るかも知れない。」
そう思い、脳神経外科医に相談した。


ほとんどの人は、100歳を超えたら手術なんてしないと思うだろう。
おそらく、ほとんどの医療機関でも80歳を超えたら手術なんてやりたがらない。
でも、ここには可能性のある患者さんには精一杯尽くしたいと思う医者が集まっている。
「数日前まで歩けていたなら、この血腫を取り除けば歩けるようになる可能性がある!」
そう思った脳外科医も家族に手術をすることを勧めた。
もちろん、手術に伴う危険性も併せて説明してだ。

高齢者になれば、手術の手技に依らなくてもいつ心臓が止まってもおかしくはない。
それでも、手術中に心臓が止まれば、手術をした医者は悪者扱いされてしまう。
医者にとっても賭けみたいなもんだ。
 #だから高齢者に侵襲的な治療をしない医療機関が多い。。。

そんな危険を抱えながらも、脳神経外科医は手術を行った。
そして、入院し、リハビリを続けたその患者は、若干見守りや支えは必要なものの、
自分の足で歩いて退院した。

退院の時、手術を勧めて良かったな、と思った。

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飲酒 [医療現場]

救急患者としてしばしばアルコール絡みで患者が運ばれてくる。

・飲酒して転倒して怪我した
・飲酒して不穏になっている
・飲酒して失神した
・飲酒してお腹を痛がってる
・飲酒して痙攣を起こしている
・飲酒して喧嘩して刺された
などなど…。

普通の人が、楽しく飲む程度には良いんですけどね、
飲み過ぎたり、前後不覚になって怪我をする様なことになることは避けて貰いたいとしばしば思います。

そして、アルコールで問題になるのはアルコール依存。
本人が自覚がないうちに依存症になり、その結果自分の精神や肉体を傷つけるだけでなく、周囲の人たちも傷つけてしまう不幸な病気です。
気がついた時にはもう手遅れであることが多く、本人が自殺してしまうこともあったり、お酒が抜けると様々な精神症状を呈したりと、かなり手がかかります。

大事な人を傷つけないためにも、程々にしましょうね。
タグ:救急 飲酒
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