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残された時間 [医療現場]

60代のの独り暮らしの女性の意識の状態がかなり悪いとして救急外来に運ばれた。
彼女は1年程前に発見された乳がんの手術と化学療法を受け、ある程度は良くなっていたものの、肝臓に転移し、今後の治療をどうするか主治医と相談しているところだった。

少し離れて住む息子夫婦に発見され、救急搬送されたその女性は、明らかに正常の状態ではないことが見て取れた。
そして、頭のCTで脳にも転移していることが明らかになった。

主治医からは「余命半年」と言われていたと言う。
そんな中でも、何かしらの治療も考慮されていた。
少しでも永く生きるために…。

でも、脳にまで転移して、全身の状態がかなり悪い状態にまでなっている今、果たして治療を続けることがいいことなのだろうか?


何が正しいかは分からない。
恐らく正しいのは、
遺された家族が後悔しない方法、だ。
でも、色んなことを考えるだけ考えたって、きっと後で何かしらの後悔の念を抱く。

ただ、そろそろ違う視点から考えていく必要があると思う。
治療して病気と闘うのではなく、
病気と共に残りの時間を大事に生きる、という視点。

病気と闘い、苦悩する日々から心を解き放てば、きっと吹っ切れる。
その上で、残された時間を大事な人たちと過ごす。
それがきっとこれから選ぶべき道ではないだろうか?

必ず訪れる、そしていよいよ目前に迫った母親の死を受け入れるために、
息子に残された時間の使い方を家族で相談するよう促した。
そうすることが、少し離れた立場から見ることができる医者の使命でもあると思っている。
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